高橋楠

所在地 大阪府堺市堺区寺地町東2丁1-17
TEL 072-238-6565
ホームページ https://takahashikusu.co.jp

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どんなものを作っていますか?

私たちがつくっているのは、堺の伝統工芸品として知られる「堺打刃物」です。この堺打刃物は、鍛治・刃付け・柄付けの分業制になっており、私たちは刀身に柄を付ける柄付け工程と卸業を担っています。鍛冶屋さんから地が上がり、刃付け屋さんが研いだものに柄を付け、最終仕上げをした上で、梱包して小売店に卸す。いわば、堺打刃物の最後の工程を担当しています。今年からは刃付けの内製化も始まりました。弊社では、お客様のご要望に応じて銘切りや刻印をするオリジナルブランド製作のほか、「一刀斎虎徹」や「堺一文字一平」という自社ブランド、さらに「sen(閃)」というフランス発の自社ブランド製品も展開。こちらはハンドルに徳島の藍染を使ったブルーが施された見た目にもインパクトのある製品です。ファクトリズムでも様々な堺打刃物を展示しますので、この機会にじっくりご覧になってください。

         

会社を一言で表すと

『堺打刃物の未来を切り拓く会社』でありたいと思っています。伝統は大切なものですが、それだけにとらわれてしまうのではなく、新しい知見やITなどの先進技術も積極的に取り入れ、俯瞰し、ビジョナリーでありながら、業界にイノベーションを起こしたい。伝統と近代化を融合させることで、業界内に好循環を生んでいきたいと考えています。そのための取り組みの一つが、今年から始めた一貫生産体制へのチャレンジです。現在はまさに堺打刃物が大きく転換していく過渡期。きっと、10年後にはこれまでとは全く異なる状況になっていることでしょう。そんな未だ見ぬ未来にも、人を大切にし、しっかりと根付いているような持続可能な伝統産業を、そしてその担い手をつくっていきたいです。

モノづくりの歴史・ターニングポイント

高橋楠は1917年の創業以来、100年以上にわたり「堺打刃物」の伝統を守り続けてきました。今年2024年は、この長い歴史の中でもっとも大きいターニングポイントといえるかもしれません。昨年は、本社を堺市堺区寺地町東へ移転するとともに、これまでのように分業に専念するのではなく、堺打刃物の「一貫生産を目指す」という方向へ舵を切ったからです。本社には、鍛冶場、研ぎ場も新しく設け、職人を一から育てていきます。分業制というのは、大正・昭和の時代において最適だったつくり方だったのかもしれません。しかし、時代がこれだけ大きく変わりゆく中、そのつくり方も時代に合わせて変化していくべきだと考えています。たとえば、鍛冶屋が刃付けの勉強をしてもいいし、その逆でもいい。伝統の中から良いものを守りつつ、今の時代に合ったものづくりの在り方を追求し、未来を切り拓いていきたいと思っています。

「ものをつくる」ことの楽しみは

『世界中の食文化を料理の力で前進させる』というのが私たちのビジョンです。良い包丁を使うことで料理が楽しくなり、今までよりも食材を美味しく食べられ、食欲が満たされて笑顔が増え、そして結果として食文化が前進していく。そういった理想的な連鎖を生み出せるモノづくりを目指しています。また、今は包丁しかつくっていませんが、ゆくゆくは他の分野にも目を向けていきたいですね。人間の三大欲求の一つである食欲を満たし、刃物文化だけでなく食文化も一緒に前に推し進めていくことができればと考えています。

作り手の想い -大切にしている考えや価値観-

こだわっているのは、「切れ味」と「研ぎやすさ」の好バランスです。一流の料理人が包丁を選ぶときには、野菜などを切った後、口に入れてすぐに吐き出します。本当に切れ味の良い包丁というのは、極力食材の細胞を破壊しないため、吐き出した後にも口の中に野菜の風味がフワっと広がるといいます。目指しているのは、そういう意味での切れ“味”のいい包丁をつくることです。そして、研ぎやすければ、その切れ味も持続できる。このバランスを大切にしています。一般的には「切れ味」と「研ぎやすさ」は相反します。硬い包丁を作ればよく切れますが切れなくなったときに研ぎにくい。研ぎやすい包丁を作ろうとすると柔らかくなり、そうなると切れ味がない。この相反する事象の両方を兼ね備えた包丁をつくることを常に主眼に置いています。料理人ではない一般の人にとって、本格的な包丁は、敷居が高いものだったりしますよね。でも、本物の切れ味を体験すると、その歴然たる違いをわかってもらえると思います。弊社の自社ブランド「一刀斎虎徹」では、両刃から片刃、ステンレスから鋼まで、あらゆるジャンルの包丁をカバーしているので、ぜひ一度使っていただいて価値を確認してほしいと思っています。

「ものづくり」を引き継ぐために今取り組んでいること

2つのサイクルを回したいと考えています。一つ目は、「作り手と使い手のコミュニケーションの好循環」です。業界全体にいえることですが、現状ではプロダクトサイクルがきちんと回っておらず、消費者からのフィードバックを正確に得られる仕組みがありません。そのため、包丁の使い手が求めているものを本当につくれているのかどうか、という問題が懸念されます。それを自社で強固な一貫生産体制を築き上げることで解決したいということになります。二つ目は、「職人育成の好循環」です。自社で職人を一から育成していくことで、深刻化している職人の後継者不足に歯止めを掛けたいと考えています。こういった取り組みは、堺打刃物では初めてのこと。もちろん一朝一夕とはいきません。10年先を見据え、この一貫体制を着実に確立し、刃物文化とその製造技術を次の世代へ継承していきたいと考えています。

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