どんなものを作っていますか?
私たちは、「より硬い材料に、より高精度な加工を加える」ことで成長してきた会社。現在は、その技術を軸に大きく3つの事業を展開しています。
一つは、焼結ダイヤモンド(PCD)や超硬合金、セラミックスといった高硬度材料を用いた、工作機械・産業機械の最も耐久性や精密性が求められる部品の製造。
2つ目は「ダイヤモンドワイヤ」の開発・製造。ダイヤモンドワイヤは、細いピアノ線にダイヤモンドの砥粒を固定した糸状の切断工具です。太陽電池やパワー半導体に使用されるシリコンウエハを塊から薄く切り出す「糸鋸」として使用されます。ダイヤモンドワイヤ製造装置の開発販売も行っており、高性能な装置としては“世界でオンリーワン”です。
3つ目は、化学繊維や炭素繊維をつくるための紡糸ノズルの製造。マスクや紙おむつなどの不織布、航空・自動車・医療など様々な分野でこのノズルが活躍しています。
これらのメイン事業に加え、常に最先端の新規事業も進行していることが特徴です。
会社を一言で表すと
私たちは「挑戦を続ける技術者集団」です。会社の理念でも、「我々はものづくりのエキスパート集団となる」とあるのですが、エキスパートとして挑戦し続けるのが私たち中村超硬です。例を挙げると、ナノサイズゼオライトの事業では、社員が開発と並行して大学で学び、まもなく2人の博士が誕生する予定です。私自身も58歳の時、再度大学で学び直し、博士号を取得しています。私がSONY出身ということもあり、画期的なトリニトロンカラーテレビやウォークマンを開発したSONYのモノづくり精神を受け継ぎ、堺版のSONYスピリッツのような絶え間ないチャレンジを続けていきます。
モノづくりの歴史・ターニングポイント
創業者は旋盤職人。ミシンの小ネジをつくる小さな鉄工所からスタートした生粋のモノづくり企業です。その町の鉄工所から、超硬合金を扱うようになり、さらに超硬合金を必要とするベアリング製造業の現場ニーズに対応し、加工だけでなく部品を提案する地域の生産技術屋さんになったのが先代社長の時代。それから後を継いだ私が、「硬さ」をさらに追及し、ダイヤモンドを扱うようになったことが大きなチャレンジであり、ターニングポイントでした。つまり中村超硬の歴史は、モノづくりの受託から部品屋になったこと。そして、鉄から超硬、ダイヤモンドといったふうに、より硬いものにシフトし、その精密加工技術を高めていった歴史でもあります。
「ものをつくる」ことの楽しみは
最先端の研究開発から、泥臭いモノづくりまで、一見対極に見えることを一つの会社で行っているのが中村超硬。その対比を見てもらうこともポイントの一つですね。そしてやはり、ファクトリズムで見ていただきたいのが、モノづくり現場での“職人の技術”。機械を使っても、モニターの数字通りにはいきません。これまで培ってきた職人の経験やデータで微調整しながら、「これだ!」というものを作るのが職人の技。さらに、研磨作業の仕上げも0.001ミリ(1ミクロン)といった単位で手作業の調整を行っています。また、PCDや超硬を他の素材、例えば鉄などの部品に引っ付ける「ロウ付け」と呼ばれる作業は、すべて手作業。これがまた難しい! 最先端の研究開発と、職人一人一人が持っている感性が活かされるモノづくり。ファクトリズムでは、そんな中村超硬独自のモノづくりに注目してもらいたいです。
作り手の想い -大切にしている考えや価値観-
当社がファクトリズムに参加する大きな目的は、私たちのモノづくりを現場で体感していただき、「一緒に挑戦したい!」と思ってくれるチャレンジャーを増やすことです。「挑戦を続ける技術者集団」の一員として、最先端の研究開発に携わる人材、1ミクロンにこだわって職人技を追求し続ける人材。様々な形で中村超硬のモノづくりにかかわり、その分野で挑戦を続けられる人材を育てていきたいと考えています。「中村超硬でチャレンジしたい!」「将来子どもを中村超硬に」そう思ってもらえるようなオープンファクトリーを実現していきます。
「ものづくり」を引き継ぐために今取り組んでいること
2004年から産学連携を積極的に活用した研究開発を進めており、ダイヤモンドワイヤは最初の成果です。現在、東京大学・大阪公立大学と共同開発を進めているのは「ナノサイズゼオライト」。中村超硬「初」の材料での事業化を目指しています。ナノサイズに極小化したゼオライトは、一瞬で水分やガスを吸い取ったり、イオン交換したりする世界オンリーワンのスーパーパウダーです。
そして、この技術を活用し、農業廃棄物のもみ殻や家畜の尿を有効利用する研究開発も行っています。窒素・炭素を循環させるカーボンニュートラルなシステムを「さかいエコシステム」と名付け、2025年大阪・関西万博に出展し、世界に発信する予定です。
中村超硬は守るべきモノづくりのDNAを守りながらも、一方で変化し続け、進化し続けていきます。