こうばも日夜変化する。
堺の風土い育まれた事業のかたち

関西貿易

所在地 大阪府堺市中区土塔町2158-1
TEL 072-230-3987
ホームページ http://www.kansaitrading.co.jp

代表取締役 森 勲

工場見学・ワークショップ

タイムテーブルから予約する

Episode

♯語り手
代表取締役社長 森 勲(もり いさお)
製造本部 営業課 森 陽裕(もり ようすけ)

社会の変化やお客さんのニーズに敏感になることは、会社の事業を育てるためには欠かせない。有限会社 関西貿易(以下、関西貿易)は、創業当初の貿易業から事業を変更し、現在は工場の中で使う機械や器具を作っている。その背景には、会社の外にも目を向けながら、日々学び続ける作り手たちの仕事への姿勢があった。

ニーズに応えるためになんでもやる

関西貿易は、工場で使う機械や器具などをオーダーメイドで作る会社だ。例えば、工場の中で部品を運搬したり組み立てたりするための機械や、荷物を運ぶときに使うパレットやラックなど、大きな機械から小さな器具まで作るものは様々。自動車やトラクターなど、自走できる機械製品を作っている会社をお客さんに多く持ち、工場の中には自転車の部品やトラクターの操縦席を運搬するための荷台など、見た目も大きさも異なる機械や器具が立ち並んでいた。

設計から製造までをワンストップで担うことでお客さんの負担を軽減できる点に、関西貿易は強みを持つ。商社と提携している会社の場合、機械を作るために必要な工程を商社が選定したいくつかの会社に分業してもらうことで、一つの製品が作られる。分業すると一社あたりの負担は減る。しかし、勲社長はお客さんにとってはデメリットになる可能性を指摘する。

「分業する場合、他社のミスを別の会社がカバーできないので、過剰なほど高い品質が求められ、時間もかかるし値段も上がってしまう。一方、ワンストップの場合はどこかの工程で多少ミスがあっても次の工程で調整ができ、かかる時間も短縮できます」

そうした品質を実現しているのは、業界では圧倒的な設計力だという。通常、製作に至るまでには数百枚の二次元図面(紙図面)を必要とするが、3D CAD図面でお客さんとやり取りすることで、モニター画像を移動させながら双方確認しながらの製作、組み立てが可能になる。時間が短縮できるだけでなく、干渉などのトラブルが図面上で発見できてトラブルを未然に防げるのだ。

お客さんファーストな関西貿易では、お客さんが希望する機械が実現できるかどうかを判断するため、時には動力の計算などで協力することもあるという。こうした関西貿易の一貫生産体制は、お客さん目線から出した答えのようだ。

堺の風土が会社を変えた

気になるのは、その社名。「貿易」という言葉がついている理由を伺ってみると、創業当時はものづくりに必要な材料の輸出や輸入を行う貿易業がメインだったという。現在の事業に至った背景の一つには、周辺企業からの要望が変わったことがある。元々、自転車部品メーカーの技術者だった勲社長は、ものづくりに携わる同僚や先輩が多くいた。すると、周囲の知り合いたちから、勲社長のもとに「工場で使う機械や器具を作ってほしい」という相談が来るようになった。そんな声に応えているうち、会社の事業が徐々に変わっていったという。

「業界全体の変化と、工場が多く集まる堺の風土が、僕たちの会社の形を変えてくれました」と、勲社長。堺の作り手たちの声に耳を傾けながら、社会の変化に柔軟に対応してきた社長や会社の懐の深さも感じた。

そして、事業の方向性を変えて様々な仕事を受注していくうちに、関西貿易に求められる技術は年々高くなってきているという。

「続けていくうちに、製造に必要な技術や知識が社内にたくさん蓄積されました。昔は苦労した仕事でも、今なら難なくできる気がします。お客さんに育ててもらいました」

会社の専門領域を明確に定め、その道一筋にものづくりをする工場のイメージとは打って変わって、社会やニーズの変化に後押しされて事業内容まで変わることがある。工場の技術力は日進月歩で変化し続けているのだ。

内と外で学びつづける

勲社長の息子である陽裕さんは、以前は食品関係の会社で営業職として働いていたが、新型コロナウイルスの感染が重症化したことをきっかけに、長期入院をすることに。病院で時間を過ごす中で自身の将来を見つめなおし、一度違う世界に飛び込んでみようと、父である勲さんが営む家業に入ることを決意した。その2ヶ月後、同じく営業職として働いていた弟の健司さんも入社。他にも、関西貿易には別の業界で働いていたスタッフが多いという。

どのようにして知識や技術を学んだのか聞いてみると「手取り足取り教わるのではなく、基本をまずは教えてもらい、わからないことは自分で調べる文化があります。隣で自分が知らない作業をしている人がいたら、後から調べて学んだりしていますね。初めは点としてバラバラに存在していた知識が、続けていくうちに繋がって、線になっていく感覚が面白いです」と、陽裕さん。会社には盗めるほどの技の蓄積があるらしい。

さらに、彼らは会社の外でも学ぶ姿勢を崩さない。他社を見学する機会も多い勲社長は、そこで学んだ視点や仕組みを自社に取り入れることにも積極的だ。

「例えば、FactorISMの運営事務局でもある株式会社 友安製作所からは『年間表彰』という仕組みを学びました。表彰制度があると、表彰されたスタッフに日頃の感謝を伝えるきっかけにもなるし、一人ひとりがどんな仕事をしているのかを他のスタッフたちが知るきっかけにもなるんです」

真似ることから学びは始まる。会社の殻にこもらず、外に出て学ぶ姿勢を忘れない一面にも、社会やニーズの変化に合わせて柔軟に事業を変えてきた関西貿易のマインドを感じる。「現状維持は衰退だ」なんていう言葉もあるが、学び続けること、そして変化を恐れないことの大切さを、彼らはまさに体現していた。

応援パートナー

コラボレーションパートナー

メディアパートナー

クリエイティブ監修

共催

後援

協力