香りを極め続けて290年
時代と人に合わせた癒しの香り

奥野晴明堂

所在地 大阪府堺市堺区市之町東6-2-15
ホームページ https://www.jinkyu1716.com

代表取締役 奥野 浩史

記者からのおすすめポイント

扉の前に立った瞬間から、甘い花の香りが漂う奥野晴明堂さんの工場。粘土のように練り上げられた材料が、押し出し機を通っていくつもの線になって出てくる様子は、思わず「わぁ~!」と声を上げてしまいます。ファクトリズムのワークショップでは、この押し出し機のミニバージョンで、自分だけのお線香をつくることができます。こういった手づくり体験だけでなく、八代目となる老舗の気さくな当主から、お線香の歴史や豆知識を聞くのも楽しみの一つですよ。

どんなものを作ってる会社?

堺で290年間、お線香をつくり続けている会社です。屋号は、香りを扱う商いということで、香木の名前から「沈香屋」。当代で、八代目沈香屋久次郎になります。ちょっと堅苦しい名前ですが、お線香は伝統的なものから今の時代に合ったユニークなものまで、様々な商品を開発しています。ハーブや花の香、中にはワインや松茸といったものまで。地域の町おこしや、結婚式の引き出物などでオリジナルのお線香やお香をつくることもありますよ。ファクトリズムでも、皆さん自身のオリジナルのお線香をつくることができますので、ぜひ自分の好きな香りで、「マイ線香」をつくってみてください。

ここがスゴイ!

「お線香」というのは文化の世界なんです。お香は平安時代から貴族が、香木を削ったものを焚いて楽しんでいましたが、お線香の発祥というのは、はっきりとわかっていないんです。しかし、それを産業として広めたのは、この大阪・堺。堺でなぜ広がったかというと、この地は火縄銃の加工や刃物の加工など、物の加工が上手かった。それで、日明貿易で入ってきた香木を京都や奈良に持って行く際、堺でお線香に加工して持って行ったと言われています。では、なぜお線香なのか? お線香は「線」の形にすることによって、とても大きなメリットがあるんです。香木や漢方生薬などの香りのものと、木の皮などを混ぜて粘土のようにし、それを細長くすることで、火をつけた時に上からゆっくりと香って長持ちする。非常に経済的で、私は“香りの究極の形”だと思っています。ちなみにお線香は、「線状の形のお香」ということで、お線香もお香ももとは一緒なんですよ。

自慢したいプロダクトや技術

当社は商品数が多いことも特徴。何百種類とあるんですが、堺ということで代表的な商品が『白檀 利休』。堺にゆかりのある茶人・千利休の教えをわかりやすく100の和歌にまとめた「利休道歌」というものがあるんですが、その中に「夏の日には白檀の香りと焚きなさい」という言葉があるんです。その教えに沿って、わびさびの趣を白檀の香りで表現したお線香です。
また、最近とても好評をいただいたのが、『祈願線香』というシリーズで、病魔退散を願ったものです。これは、昔、ペスト菌が流行った時には香料屋さんで働いている人が病気にかからなかったという文献が残っていて、疫病に良いとされる香料を使ってつくったものなんです。ローズマリーや陳皮、丁子など、身体に良いというよりも悪霊を退散させるという言い伝えがあるものですね。「アマビエ」のイラストも描いたパッケージで、たくさんの方にご購入いただきました。

モノづくりの歴史・ターニングポイント

創業1732年、290年の歴史になります。長い歴史がありますので、ターニングポイントもたくさんありますね。江戸時代から始まっていますので、明治維新も激動でしょうし、大正デモクラシーや世界恐慌、戦争も経験しています。空襲では当時のビルも焼けてしまいました。それでもなんとか続いているのは、時代時代に合った商売を考えて続けているからでしょうね。私が奥野晴明堂に入社したのは、今から25年前。当時は会社にパソコンもなく、従業員も高齢ばかりで、正直不安しかありませんでした。かなり悩んでいたんですが、ある時、考えていてもしょうがないと、休日はしっかり遊び、上手く切り替えるようにしたんです。すると、自分が考えた商品が売れるようになって、商売が楽しくなった。するとまた、いろんな人に会って学びたい、いろんな場に行き、学びと共に人と人とのつながりも増えていった。そのなかで、堺の街を盛り上げていきたいという仲間とも出会うことができましたし、ちょっとした雑談の中で、新商品が生まれることも多々ありました。今は「次の時代にどうつなげていくか」。それが課題ですね。

これからチャレンジしたいこと

新しい文化をつくっていきたいですね! 例えば、ハロウィンにお香を焚くような文化。日本では仮装パーティーのようになっていますが、もともとヨーロッパでは、ハロウィンに悪霊を退散させるため植物、ローズマリーや丁子(クローブ)も使っていたと言われています。それを玄関先に置くことで、悪霊を退散させていたわけです。日本でも、せっかく仮装をするのなら、「ローズマリーや丁子のお香も焚いて、悪霊を切る」という文化をつくりたいですね。それならお香のプレゼントもできるし、バレンタインデーのチョコレートのような風習ですね。そういった新しいお香風習をつくっていきたいと考えています。

会社を一言で表すと?

社長というのは、続けていくときの「継ぎ役」だけだと思っています。次の世代にどうつないでいくか。楽しみながら無理をせず、遊びと仕事の両輪でやっていくのが当社というか、私の代のスタイルですね。だから、また時代が変わったら、その人たちのやり方をしたらいい。私たちは私たちのスタイルで。それらは先代の背中を見て感じ取ったことです。先人たちから学んだことを、時代に合わせて自分自身が成長指していく。「温故知新 不易流行」の言葉通りに、それが290年間、代々続いた“沈香屋”です。

つくり手の想い・伝えたいこと

お線香の好みって人それぞれ。「線香らしいお線香ほしいねん」っていう方もいれば、「香りも煙もないお線香がイイ」っていう方もいる。実際に私たちがつくった『ゼロ』という商品は、お線香だけど香りも煙もゼロ。線香屋としては正直プライドが傷つきましたけど、住まいの問題や香料アレルギーの問題で、これがいいという愛好家の方もいらっしゃる。だから、それらのニーズに応じた商品を、私たちつくり手がつくっていかないといけないなと。私たちがどう思うかよりも、お客様がどう思うか。皆さんが喜んでくれるようなお線香を開発していきたいということですね。ですから、ファクトリズムも、来てくれた方が喜んでくれたら一番いいですね。

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