性能を付加する「セラミックス コーティング」
「溶射」のエキスパート
記者からのおすすめポイント
皆さんは、「溶射」という技術をご存じですか? 初めて聞いた!という人も多いはず。でも、この溶射の技術、私たちの暮らしや産業の中で欠かせない技術なんです。大阪富士工業は、その溶射で富士山のように日本一!を目指している会社。今回のファクトリズムで、ぜひ「溶射」の魅力、モノづくりの魅力に触れてください。
どんなものを作ってる会社?
私たちの仕事は「溶射」。簡単に表すなら、金属、セラミックスのコーティング業といったところでしょうか。ペンキではなく、金属やセラミックスを溶かして機械の力で表面に付着させてコーティングする技術です。金属、セラミックスには腐食に強いものや、摩耗に強いもの、あとは電気を絶縁させるもの、用途に応じて多種多様な「溶射」があります。例えば、炊飯器のお釜の部分がありますよね。あのお釜にも私たちの溶射技術が使われているんですよ。他にも、ステンレスを使いたいけど、予算的に難しいという場合も私たちの出番。鉄などの錆びる部品の必要なところにだけ、「溶射」でステンレス機能を付加するんです。そういうふうに、部品や機材の本来の性質とは異なる機能・特質を持たせるのが「溶射」という技術です。
ココに釘付け!
強みとしては、大規模な工場を備えていることが一つです。他では扱うことのできない大型部品も「溶射」できるので、同業他社との差別化ポイントとなっていると思います。また、「溶射」の種類の豊富さとコーティングが難しい材料の厚みを薄い膜や厚い膜に自在にコントロールできるノウハウや技術があります。これらも私たちならではの強みです。
モノづくりの歴史・ターニングポイント
もともと、私たちは製鉄所の中で使われる鋳型の補修を、溶接によって行なうことを主要事業としていました。「溶射」を手掛け始めたのは1980年頃のこと。非常にハードな環境のもとで使用する設備部品を溶接補修する延長線上で、より高機能な特性をコーティングで付加する仕事もするようになっていったんです。当時の溶射業界では類をみない大きな工場で、橋梁や製鉄関係で用いられる大型部品のコーティングなどを請け負っていました。また、1990年代に入ってからは電子部品を焼成するトレーや発電所のボイラ壁を保護するコーティングをする仕事も増えていきました。そして2000年代からは化学プラントや半導体関係の部品へのコーティングも請け負うように。そんなふうに、1980年頃から10年単位で3つのターニングポイントがあり、その都度少しずつ産業界の分野も変化させ、成長してきました。
これから見据える未来
「溶射」の技術は、様々な分野で必要とされています。そのニーズをキャッチし、将来に向けて目指しているのは、火力発電所関係の現地工事の請け負いです。全国の火力発電所を対象に、積極的に動き始めています。そして、近年広く普及し始めている「二次電池」と呼ばれるもの。つまり、これからの電気自動車などに使われている何回も充電して使える電池のことです。この方面の装置にコーティングをするなど、「溶射」のニーズはたくさんあるだろうと見込み、これからさらに受注を伸ばしていきたいと考えています。
会社を一言で表すと?
難しい質問ですが、表すとすれば「真摯に、誠実に、ひたむきに仕事に向き合う会社」でしょうか。どんな分野でも同じだと思いますが、仕事に取り組む姿勢は、とても大切ですよね? その結果、お客様に心から喜んでもらえるようにする。そういう想いは社員一同で共有できていると思います。「大阪富士工業」という社名には、地元・大阪に根を張りながら、富士山のように日本一の会社になりたいという意気込みが込められているんです。この名前に恥じないような仕事をしていきたいですね。
つくり手の想い・伝えたいこと
製造業・加工業をもっと盛り上げていきたいと思っています。近年は人材不足が課題となっていて、職人の技を次の世代に継承することが難しくなってきています。ロボットで自動化することで、その問題を解消しようという動きもありますが、やはり「人の手」でなければダメなところもあるんです。私たちの「溶射」も、職人の技が求められるものなのですが、その担い手は年々減少傾向にあります。職人はどんどん高齢化していて、その後継者がなかなか出てこないんです。だから、私たちは人材育成にこれまで以上に尽力していきます。皆さんにはSDGsや地球に優しい生活に役立つ「溶射」の重要性に気づいていただければ嬉しいですね。