北の昆布×職人の技×堺刃物
3つの出会いが生む希少な昆布製品

43_郷田商店

所在地 大阪府堺市堺区市之町東5-1-23
TEL 072-222-6688
ホームページ http://www.godashoten.com

代表取締役 郷田 光伸

記者からのおすすめポイント

シューシューと音を立てて削られる昆布。まるで薄いシルクのように柔らかく波打ち、郷田商店特製の「おぼろ昆布」へと姿を変えます。昆布は世界無形文化遺産に登録された「和食」を支える重要な食材。昔々その食材が、堺の地特有の刃物と職人の技術に出会い、美味しいおぼろ昆布へと生まれ変わりました。ファクトリズムでは、今では希少となったこの昆布の“手すき”の技術を、五感をフルに使って堪能してください。

どんなものを作ってる会社?

日本の食文化を支える代表的な食材「昆布」。郷田商店は1946年に創業以来、その昆布の中でも良質なものにこだわり、昆布製品をつくり続けてきた昆布専門店です。希少価値も高く、味わいも豊かな手すきの『おぼろ昆布』や『とろろ昆布』、そして大阪の郷土料理バッテラ寿司に欠かせない『白板昆布』をはじめ、様々な昆布製品をつくっています。おぼろ昆布ととろろ昆布は、「大阪産(もん)名品」にも認証され、長く愛され続けるお土産としても人気です。

ここがスゴイ!①

郷田商店の手すき昆布が「美味しい」と愛され続けている理由の一つが、昆布の中でも最高級と言われる北海道南部「白口浜産真昆布」のみを使っていること。上品な甘みと清澄な出汁が取れ、かつては朝廷や幕府に献上されるほどの逸品でした。そして、さらにその素材を創業以来、注ぎ足し注ぎ足し使っている“秘伝の酢”に浸していること。最高の素材のみを浸し続けてきたこのお酢には、その昆布の旨味成分がたっぷり溶け込み、お酢自体が唯一無二、極上の調味料になるというわけです。余談になりますが、このお酢で酢の物をつくったら最高に美味しいんですよ。この工程では、およそ1kgの昆布をお酢に漬けて、1.4kgにするんですが、これを毎日一定の1.4kgにするのが難しい。昆布の様子を見ながら、漬けて上げるだけで調整していくので、昆布やお酢だけでなく、実は職人の経験からくる「勘」が肝になる工程なんですよ。

ここがスゴイ!②

手すき昆布の美味しさの秘密で忘れてはならないのが、「堺刃物」とそれを使う「職人の技」。おぼろ昆布の場合、昆布に特注の包丁を当て、職人が手作業で約0.02の薄さに削っていくんですが、薄ければ薄いほど舌触りが良く、見た目も白い部分が多くなります。これができるのは堺刃物と職人の技があるからこそ。切れ味が良く、昆布に吸い付くような堺刃物の包丁に、職人一人ひとりが「アキタ」と呼ばれる曲げを入れていきます。目に見えないくらいの曲げなんですが、これがないと昆布が上手く削れない。普通の包丁は曲げられないし、曲がると切れなくなりますよね。でもこの特注の包丁は、それができる特別な包丁というわけです。さらに昆布を削る包丁は、約15~20分で削れなくなるので、複数の予備を持っていて、交換しながら削っていきます。そして、職人自らそれらの包丁を研ぎ直し、またアキタを入れる。昆布を削る技術そのものはもちろん、その包丁と包丁の加工技術も私たちの自慢なんです。

自慢したいプロダクトや技術

手すきの「おぼろ昆布」は、郷田商店の看板商品です。職人が手作業で削ったおぼろ昆布は、舌触りが良くて極薄。機械で削ったものとは、袋の上から触っても、そのしっとり柔らかな感触が違います。実はこのおぼろ昆布、この堺の地が発祥だと言われています。江戸時代に北前船で北海道から堺に運ばれてきた昆布が、堺の刃物と出会って生まれたのがおぼろ昆布。また、加工で使う秘伝の酢は、前述したようにそれだけで旨味がぎっしり詰まっているので、余分なものを足す必要がない。他社の製品は、味を足すために調味料を加えているものが多いのですが、うちのおぼろ昆布は、素材そのままの昆布とお酢だけ。お子さんも安心して食べていただけますので、うどんやおにぎり、汁物など、日常使いでお召し上がりください。

モノづくりの歴史・ターニングポイント

「バッテラ寿司の昆布やったら、郷田商店から買え」そう言ってもらえるようになったのが、うちが伸びたきっかけですね。バッテラ寿司は、100年以上前に考案された安くて旨い大阪の味。酢飯の上に薄く切った〆鯖と白板昆布を重ね、木枠で押した押し寿司。形がボートのようだということで、ポルトガル語の「ボート=バッテーラ」の名前が付けられたそうです。この「白板昆布」は、とろろやおぼろを削った後の芯の部分。それを私の祖母がバッテラ寿司の押し型のサイズに合わせてカットし、100枚を紐で縛って売ったのが「バッテラ昆布」。それを大阪のミナミやキタのお寿司屋さんに売り歩いた。だから、白板昆布をバッテラ昆布として製品化したのが郷田商店というわけですね。バッテラ寿司は、大阪の手軽なテイクアウトフード。テイクアウトが主流になった今、皆さんも一度召し上がってみてください。うちの昆布が使われているかもしれませんよ。

これからチャレンジしたいこと

戦前、堺の地には約150軒もの昆布屋があったと言われています。しかし、今では5軒のみ。さらにその中で手すきの加工を行っているのは、うちを含めて3軒だけなんです。そのため、これからの一番の目標は、“継続”ですね。やはり手作業だと生産性が上がらず、値段も高くなってしまう。より多くのお客様に、日常的に昆布を楽しんでもらうためには悩ましいところですが、バランスを取ってこの食文化を継続させていきたいと思います。

会社を一言で表すと?

私たちは、「昆布」と「刃物」という点で、堺の伝統産業にかかわっています。そのため、“堺の伝統産業を守っていく会社”という表現はどうでしょうか? 前述したように手すきの昆布はどんどん減っていますが、2015年にはその職人の後継者を育成するため、「職人養成所」も開設。そこで若手の職人を養成していたため、当社は比較的若い職人も多いんですよ。それに、他の地域では個人事業主の職人さんが多いですが、当社は一人ひとり社員にしているので、後輩を育てやすい。育った職人が、また次を育てる。今後も上方食文化の継承のために、一歩一歩進んでいきたいと思います。

つくり手の想い・伝えたいこと

やっぱり食品なので、食べてくれる方が「美味しい」って言ってくださるのが一番。職人はみんな、「いいもんつくろう!美味しいもんつくろう!」という意識でつくっています。
百貨店で実演販売などを開催したときは、削りたてを試食してもらって、笑顔で「美味しい!」って言ってもらえることが楽しみでした。このファクトリズムでも、そうやって直接お客さんと接することができるのが楽しみですね。そして、実際につくっているところを見てもらって、郷田商店のファンになってもらいたい。堺の昆布のファンになってもらいたい。「皆さんの近くに、こんな美味しいもんがあるんですよ」と伝えたいですね。

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