伝統ベースの「進化論」
堺打刃物の未来を見つめて

41_馬場刃物製作所

所在地 大阪府堺市堺区宿屋町東3-3-22
TEL 072-232-2641
ホームページ http://www.baba-hamono.com/

代表取締役社長 馬場 修三

記者からのおすすめポイント

600年もの歴史を誇る「堺打刃物」。その切れ味の良さ、持続性から、プロの料理人の多くが愛用しています。そんな堺打刃物の現場から、今回のファクトリズムに3社が参加。3社それぞれ見どころが異なり、様々な視点から堺打刃物の魅力が堪能できるはず。
馬場刃物製作所もその中の1社。同社は堺打刃物の工程の中で、水の仕事と言われる「研ぎ」の自社工房を新設しています。職人は、国籍問わず若手が中心。ファクトリズムでは、この工房の見学や包丁の切れ味体験などと共に、そこに詰まっている、伝統産業の未来や包丁づくりへのこだわりを感じてください。

どんなものを作ってる会社?

各ご家庭に1本はあるであろう包丁。その中でも馬場刃物製造所では、「和包丁」と言われるものをメインに製造しています。例えば、刺身包丁、出刃包丁などプロが使う和包丁から、家庭で使いやすい万能包丁など。お客様の好みのデザインや形などに合わせた細かなオーダーにも対応しています。これら包丁には大きく分けて、片面にしか刃がついていない「片刃」と、両面に刃がある「両刃」の2種類があり、和包丁は基本的に片刃。
ご家庭でよく使われる「三徳包丁(万能包丁)」は西洋から伝わった「両刃」をベースにし、日本で独自に生まれた形です。
こういった“包丁の基礎知識”もファクトリズムで学んでいただけたらと計画中です。「お手入れの仕方」や「包丁の選び方」「研ぎ方」など、普段気になることを気軽に質問してください。

ここがスゴイ!

「堺打刃物のつくり手を増やしたい」その想いで2017年に設立したのが、自社の「刃付け(研ぎ)」の工房である『研ぎ工房』。設立の数年前から、若手人材を熟練した職人のもとに修業に出し、準備を進めてきました。現在、その若手職人やドイツ出身の若手が中心となって、師匠に教えを請いながら刃付け作業を行っています。刃付けとは、鍛冶職人が製造した「地」と呼ばれる刃物のベースになる鍛造品を、様々な砥石や道具で研ぎ、美しく、よく切れる包丁に仕上げていく工程。堺打刃物は、この「鍛冶」「刃付け」「問屋(柄付け、銘入れなど)」の3つに分かれた分業制が基本です。もともと問屋であった当社は、この研ぎ工房を新設することで、刃付けと問屋を兼ねる数少ない刃物屋となりました。
そして研ぎ工房は、人材育成のためだけでなく、私たちの“こだわりを追求する場所”でもあります。「何を偉そうに」と言われるかもしれませんが、そういった自分たちがつくりたい、お届けしたい包丁を少量でもつくれるよう目指していきたいんです。

自慢したいプロダクトや技術

『漆 景清シリーズ』は、約10年前に私たちが本格的に海外に進出するきっかけとなったシリーズです。私たちが得意とする和包丁を海外で販売するために、行き着いたのがこの形。通常、和包丁のハンドルは、扱いやすい朴木(ほおのき)を使うのが一般的ですが、これだと海外の場合は、傷んだ時に交換ができない。美しさを長く保つために、漆塗りの伝統工芸士と共同で「漆柄」を開発しました。また両刃は、刃の部分と峰側の平らな部分の境目「鎬(しのぎ)」がないのがほとんどですが、その鎬を付けた新しい両刃の形も生み出したのです。自社の研ぎ工房で付けた、さざ波のように美しい模様「カスミ仕上げ」も、非常に人気の高いポイント。このように既成概念にとらわれず改良を重ね、堺打刃物特有の切れ味の持続性、使いやすさ、研ぎやすさ、デザイン性を兼ね備えた景清シリーズは、まさに私たちの進化の証と言ってもいいのではないでしょうか。

モノづくりの歴史・ターニングポイント

1916年の創業当時は、鍛冶屋からスタートした馬場刃物製作所。年月を経て、問屋業へと変化し、2011年には『漆 景清シリーズ』を発売。海外の展示会にも積極的に参加し、日本の包丁を求める世界各国の料理人から高い評価を得るようになりました。そして2017年、堺打刃物のつくり手を育成するため、前述した研ぎ工房を新設。後継者育成の場、そして自分たちの理想の包丁を求める場として日々精進しています。この研ぎ工房をつくったことは、本当に大きな変化。ファクトリズムでもこの工房を見学していただきますので、若手の頑張りを見てやってください!

これからチャレンジしたいこと

堺打刃物にかかわる人や、これから携わっていきたい人、興味がある人など、若い人たちが集まれる場所をつくりたいと考えています。例えば、どこかの職人になったとしても、そこで情報がシャットダウンしてしまい、横とのつながりがなくなる。でもこれからの時代は、もっと風通し良く、情報交換や技術交流することが求められているのではないでしょうか? 堅苦しいこと抜きで若手が気軽に集まって、みんなでもっと良いモノをつくろう!成長しよう!そんな場をつくれたらいいですね。

会社を一言で表すと?

「包丁にひたむきに向き合っている会社」というのが当社を一言で表す言葉。しかし、これはどこの会社さんでも、職人さんでも同じだと思うんです。みんなひたむきに取り組んでいる。その中で私たちが考えるのが、伝統工芸品にかかわる者として、その時代に合わせて進化していかないといけないのではないかということ。伝統工芸だからといって、すべて同じやり方に固執するのではなく、「こっちの方が良いものになるんじゃないか?」というのならば、それは改良すれば良いこと。本当に小さなことだったりするんですが、毎日少しずつ進化していく。そんなモノづくりで、ただひたむきに包丁に向き合っています。

つくり手の想い・伝えたいこと

「おばあちゃんからもらったんです」と、30年以上使った包丁を修理に出しに来るお客様がいらっしゃいます。包丁は大事に使うと、それくらい長持ちする道具。私たちは、使い手にとってより良い包丁をつくるために、一つ一つ丁寧にモノづくりをしています。そして、メンテナンスや使い方もしっかり伝え、包丁だけでなく、価格も関係なく、道具を長く大切にできる習慣が生まれるモノづくりを目指しています。
ですからファクトリズムでは、工房の見学だけでなく、包丁の基礎知識を学ぶものや、切れ味を体験できるワークショップなども予定しています。ぜひこの機会に、皆さんがいつも使っている包丁のことを考えてみませんか?

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