お茶と、人と、人と。
縁を結ぶのは、選び抜かれた茶葉
記者からのおすすめポイント
まずは一服。つぼ市製茶本舗さんのお茶を飲んでみてください。鮮やかな緑色に甘い味わい、ふんわりリラックスできる緑茶の香り。「あ~美味しい」自然とそんな言葉が漏れてきます。これは同社が、170年以上“本当に美味しいお茶”にこだわり続けてきた証。今回のファクトリズムでは、同社創業の地であり、「茶の湯」発展の街である堺の茶寮で、実際に自慢のお茶を飲みながら、美味しさの秘密を知ることができます。茶寮を出た頃にはきっと皆さんも、「誰かにお茶を淹れたくなる」。
どんなものを作ってる会社?
創業170年以上、茶の湯文化が発展した大阪・堺で創業した製茶問屋です。茶葉の仕入れから、製造・梱包といった商品化まで行っています。日本茶だけでなく、中国茶・健康茶・茶菓子などの商品企画開発から行い、幅広い年代から支持されています。ファクトリズムでは、当社が運営する堺の町家をリノベーションした日本茶カフェ『茶寮 つぼ市製茶本舗』で、様々なお茶も試飲できるワークショップも開催します。この機会に、街中とは思えないゆったりとした空間で、“本当に美味しいお茶”を知ってください。
ここがスゴイ!①
お茶の品質は、目利きで8割決まると言われています。そのためつぼ市では、『茶審査技術七段』の段位を持つ茶匠らが、新茶シーズンの約1ヵ月間を産地にこもりっきりで毎日お茶を鑑定し、1年分の仕入れを行います。多い時は1日2,000点ものお茶を鑑定することも。
また、お茶の仕入れは市場ならではの入れ札制。それぞれ約30秒以内で鑑定し、適切な価格で入れ札を行わないと、他社に先を越されてしまいます。鑑定の基準は、自らの「目と鼻と舌」。そして、茶葉を手に取った時の「感触」。ベテランの茶匠は、その道30年40年という経験を持ち、瞬時にお茶の仕入れ値も決定していきます。こうして一年分のお茶を仕入れていくわけですが、例えば一つの商品をつくるためのお茶を一年間分仕入れようと思うと、何百点ものお茶をブレンドし、常に同じ美味しさにしなければいけません。だから、目利きだけでなく、“ブレンド”も非常に大切な技術であり、ブレンドのことも考えながら、仕入れを行っているんです。
ここがスゴイ!②
「意外」と思われるかもしれませんが、お茶の仕入れから最後の商品化まで、一貫して行っているお茶屋さんは非常に少ないです。様々な手間を省くために分業にする会社が多いのですが、当社は創業以来、仕入れから袋詰めまでしっかりとこだわりぬくために、このスタイルを守り続けています。茶葉を仕入れたときは、荒茶という状態。そこから仕上げ工程として焙煎(火入れ)を行うのですが、私たちは、一番手間のかかる「後火仕上げ」という方法を取っています。後火仕上げとは、焙煎の前にあらかじめ茶葉を葉・頭・粉の部分に分け、気温や湿度など様々な要素を踏まえながら、それぞれに適した温度で焙煎するというもの。手間のかかる作業ですが、これも茶葉の香りや味わいにつながるこだわりの一つです。
自慢したいプロダクトや技術
当社で50年以上販売し続けているロングセラー商品が煎茶『特選利休の詩』。「大阪産(もん)名品」にも認定されており、2019年に行われた大阪G20でも、会場で振舞われたお茶なんですよ。新茶の仕入れの際も、この『利休の詩』のために仕入れる茶葉も多く、当社を代表する深蒸し茶です。そして、あまり知られていないことですが、この50年以上の間、常に美味しく味わっていただくため、時代に合わせて少しずつお茶の配合などを変えています。例えば、リラックスしたいという風潮が強くなったときには、リラックス効果があるテアニンを多く出すために、旨味成分が多い配合にするなど同じ商品であっても、いつも美味しくあるためにブラッシュアップし続けています。
モノづくりの歴史・ターニングポイント
2020年に170周年を迎え、創業200年に向けて歩み出したばかりのつぼ市製茶本舗。嘉永3年(1850年)に堺で創業し、大阪の戦禍も乗り越え、様々な挑戦を行ってきました。なかでも昭和38年日本で初めて台湾茶の輸入をスタートしたのは、大きな挑戦でした。日本茶以外の幅が広がるきっかけとなりました。また、平成3年に関西スーパーさんの出店がスタートしたこともターニングポイント。他のスーパーにもご紹介いただき、全国に出荷量も増えたことから、第二工場を新設しました。平成25年には、『茶寮 つぼ市製茶本舗』を開店。お茶だけでなくお茶スイーツや茶粥などが味わえる場所として、幅広い世代から人気に。現在は大阪なんばにも茶寮を展開し、お客様の声を直接キャッチする場所としても非常に重要な存在となっています。
これからチャレンジしたいこと
「お茶のある暮らし」を提案していくブランドとして、お茶の葉だけじゃなく、お茶に合わせるお菓子や茶器などの雑貨も提案していきたいと思っています。こういったチャレンジの中で、創業170周年を記念して立ち上げたブランド「TSUBOICHI TEA PLACE」では、お茶の発酵ドリンク『KOMBUCHA(コンブチャ)』も発売。アメリカやヨーロッパなどでは、美容や健康に良いということで数年前から人気のコンブチャですが、私たちは“老舗のお茶屋さんがつくる”というコンセプトで開発を進めてきました。この夏には大阪の百貨店でポップアップショップも開催し、たくさんに方にお越しいただきました。今後も「本当に美味しいお茶」を根幹に、自由な発想でお茶のある暮らしを提案していきます。
▼「お茶の発酵ドリンクBeau"TEA"KOMBUCHA」
会社を一言で表すと?
一言で言うと「美味しいお茶のある暮らしを提案する会社」。日常に、気軽に、お茶を取り入れられる。そんな暮らしのために様々な商品や、茶寮のような空間も提案しています。そして、もう一つ「大阪のお茶屋さん」であるということが、私たちの誇り。
お茶と言えば関西では京都が有名。大阪のお茶屋さんは珍しいと言われます。しかし、江戸時代に天下の台所と言われ、全国各地の産物が集まってきた大阪だからこそ、お茶屋さんがあってしかるべきではないでしょうか。さらに産地ではない私たちは、多種多様な産地のお茶をブレンドし、より良いものをつくることが可能。ですから、私たちは、“ブレンド力”にも優れているんです。そして、当社が創業した堺は、茶の湯発展の地であり、多くの茶人を生んだ地。その地で江戸時代から続くお茶屋として、私たちが喫茶文化を発信し続けていきたいと強く思っています。
つくり手の想い・伝えたいこと
私たちは、「一杯のお茶を通じて世の中の安らぎと和に貢献します」という経営理念のもと、お茶づくりを行っています。では、安らぎを提案できるお茶とはどんなお茶なのか? それは、当たり前のことですが、“本当に美味しいお茶”。本当にお客様が納得できる味で、納得できる価格で“美味しい”を成立させる。さらに、味だけでなく心も豊かな気持ちになれるような、そんな美味しさが大切。それができる商品でないとつくるべきではないと考えています。
そして、お茶は単にのどを潤すためのものだけではありません。「お茶と、人と、人と」これは、私たちが大切にしているもう一つの言葉なのですが、お茶が人と人とをつなぐ飲み物であるということ。お茶のある場面は、人と人の会話が生まれる場面。そんなときに、間に美味しいお茶があれば、きっと会話も弾み、良い関係も結べるのではないでしょうか。だから私たちは、納得いくまで美味しさにこだわり続けます。それが安らぎと和をつくると信じているから。