暮らしを支える「厚さ0.3mm」の世界
記者からのおすすめポイント
私たちの暮らしの様々な場面で使われている「パイプ」。どうやってつくられているか。そもそも、もとの材料はどんな形状なのか。皆さんはご存じですか? ヤマトステンレスさんは、そのパイプをつくっている会社。ズラリと並ぶ長いステンレスパイプ。筒状の断面をのぞくと、驚くほどの薄さです。薄いからこそ必要な技術、できあがる製品、ここならではのファクトリズムを感じてください。ちなみに、赤や黄色、レトロなグリーンが可愛いプレス機もレアで必見ですよ。
どんなものを作ってる会社?
厚さが0.3~0.5mm、直径が34㎜~100㎜の「薄肉ステンレスパイプ」をつくっています。これだけ薄いステンレスのパイプをつくっている会社は珍しく、非常にニッチな業界。そのパイプを、さらにいろいろな形状に加工して、お客様のもとにお送りするという「製造・加工・梱包」まで自社で行っています。このパイプが使われるのは、主に家庭用のガス給湯機。マンションやアパートなどの集合住宅で使われていますので、皆さんのおうちにも当社の製品が使われているかもしれませんね。
ここがスゴイ!
私たちが得意としているのが、「厚さ0.3~0.5mm」という薄肉ステンレスパイプの造管・加工です。「造管(ぞうかん)」というのは、簡単に言うとコイル状になった平面の素材を筒状にし、パイプ材を製造すること。当社は特に極薄のステンレス材を使った造管が得意だというわけです。できあがったパイプ材は、さらに用途に合った加工をし、家庭用の大手ガス機器メーカーで使われています。この造管の難しいところが、「溶接」。ステンレスの平板をギュッと筒状にして、付け合わせたところを溶接していくんですが、溶接の位置が少しでもずれてしまうと溶接が割れたり、パイプの形にならない。専用の機械で行うこととはいえ、最初のセットや、付け合わせた場所など人の目でチェックしないとずれてしまうことがあるんです。だからこの作業を任せられるのは、ある程度の技術と知識を持った職人だけ。こうやってできあがったパイプ材は、国内だけでなく、海外でも使われています。
自慢したいプロダクトや技術
通常、パイプ材はそのまま機械で曲げることができますが、私たちがつくっている薄肉ステンレスパイプだとそうはいきません。無理に曲げてしまうと、潰れたり割れてしまったりするんです。そのため、パイプに細かな山をいくつも付け、自由に曲げられるようにしたものが「フレキシブル管」。ちょっとわかりにくいですが、ストローの折れ曲がる部分のような波状の形と言えば伝わるでしょうか? このストローであれば、自由に曲げの角度も変えられますよね? このフレキシブル管が、当社の自慢の製品であり技術。製造現場では、小気味の良い音を立てて次々と山ができあがっていきます。ファクトリズムでも、タイミングが合えば、ぜひじっくりご覧ください。
モノづくりの歴史・ターニングポイント
1981年に創業し、今年で41年。薄肉ステンレスパイプの製造・加工会社としては、パイオニアのような存在として知られています。2021年4月に私が社長に就任し、今回初めてのファクトリズムへの参加を決めました。初参加で分からないことも多いですが、私たち自身もファクトリズムを楽しんでいけたらと思っています。これから、他の社員も巻き込んで、皆さんに楽しんでいただける企画を計画していきます!
これからチャレンジしたいこと
時代のニーズに沿ったモノづくりができる会社にしていきたいですね。現在は、ガスメーカー向けの仕事がほとんどになっていますので、他業界への開拓なども取り組んでいます。ベースになるのは、当社が得意としている薄肉のステンレスパイプですので、それを必要とされている業界を絶賛開拓中です。ファクトリズムでも、たくさんの異業種の皆さんとの出会いがあればと期待しています。また、自社製品の開発も考えていて、社員みんなで考える機会を持ちたいですね。こちらも他社さんとコラボすれば、可能性もどんどん広がると考えています。
会社を一言で表すと?
なかなか難しい質問ですが、今回のファクトリズムに関して言うと「何か新しいことにチャレンジしたい」と考えている会社ですね。オープンファクトリーの中身は計画中ですが、この機会を使って、職場見学のように、社員のお子さんにも遊びに来てもらえたらいいなと考えています。働くお父さんやお母さんの姿を見て、また家族のきずなが深まれば、社員のモチベーションにもつながりますよね。
つくり手の想い・伝えたいこと
私たちがつくっているのは、ガス給湯器の排気筒。溶接が悪くて穴が開けば、大事故につながったり、一酸化炭素中毒ということになったり…。つまり、人の命に直結するような製品なんです。そのため、モノづくりに向き合うときは、大袈裟かもしれませんが、「人の命を預かっている」という安全意識を持って取り組んでいます。といっても、工場内の雰囲気はピリピリとしたものではなく、とても和やかな雰囲気。オープンファクトリーでも、皆さんのお越しを社員一同心待ちにしております!